春季限定いちごタルト事件 ★★★★☆ 

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

小鳩くんと小佐内さんは、ある約束を交わした仲。といってもべつに付き合ってるわけじゃなくて、二人は同じ目的を持つ同士なのだ。
二人が手に取り目指すのは、諦念と儀礼的無関心に身を包んだ”小市民”。清く正しく慎ましやかに、誰の恨みも買わない人生。
だけど人間、そんなすぐには変われない。小鳩くんは人より少し頭が回ってしまうので、人が気付かないことに気付いてしまう。探偵面して名推理なんて、小市民の所行じゃない。だけど、知ってることを言わないのは不人情な気もするし……
不安げな小佐内さんの視線を気にしつつ、今日も頑張れ小鳩くん、いつか掴むさ小市民の星!

小鳩くんは、きっと中学校の時、人が話してても「つまり、それはこれこれこういうわけでしょ?」と、相手が言い終わる前に結論を突きつけちゃうような人だったんだろうね。冷笑混じりに。

ミステリ自体は添え物程度で、メインは小鳩くんと小佐内さんのキャラ、及び関係の描写。小鳩くんの一人称形式なので、小佐内さんの(腹黒い)心情が読み取れず、そこが大きな魅力になってる。見た目小動物の小佐内さんが、きっと心の中ではあんなことを! こんなことを! みたいな妄想が広がる。おれだけかも。
そもそも二人の関係や小鳩くん自身の心情の表現も抑えめなので、一体どちらが優位な関係なのかとか、互いをどう思っているのかなどが凄く気になる。それを妄想するのも楽しい。おれだけかも。
あとやっぱり、本気出してないけど本気出したら凄いよ的キャラはかっこいい。